シネマクエスト 神取恭子のシネマコラム vol.164 映画『佐々木、イン、マイマイン』第33回東京国際映画祭 藤原季節さん、細川岳さん、内山拓也監督 Q&A
“佐々木”とは、あなたにとってのアイツかもしれない。
俳優になるために上京したものの、鳴かず飛ばずの日々を送る27歳の悠二。彼はある日、高校時代に圧倒的な存在感を放っていた同級生・佐々木と仲間たちとの日々を思い起こす。常に周りを巻き込みながら、爆発的な生命力で周囲を魅了していく佐々木。だが佐々木の身に降りかかる“ある出来事” をきっかけに、保たれていた友情がしだいに崩れていく——。
今年観た200本近く映画の中で一番好きかもしれない。
心の中で強い風が吹いて、冒頭からラストまで一気に駆け抜けたような作品だった。
胸が掻き立てられるドラム音、佐々木という唯一無二の存在、立ち止まってしまっている自分、戻らない日々。
“青春”と一言で表すこともできるけど、その一言に“佐々木”は収まってくれない。
映画『佐々木、イン、マイマイン』は、その佐々木を演じた俳優・細川岳の高校時代の同級生とのエピソードが原案となっている。
監督は、King Gnu “The hole” のミュージックビデオなどを手掛け、初の長編作品「ヴァニタス」がPFFアワード2016観客賞を受賞した注目の新鋭、内山拓也監督。
「ヴァニタス」に出演した細川が内山監督に自身の体験談を持ちかけたところからプロジェクトはスタートしたという。
俳優志望の主人公・悠二には、『his』での好演が記憶に新しい藤原季節。俳優としてなかなか芽が出ない悠二の心情、佐々木との言葉少なな空気感を、この上なく切なく演じている。
東京国際映画祭で観客と一緒に作品を観ていた、藤原、細川、内田監督。
上映後に行われたQ&Aでは、3人とも思いが溢れ、言葉がなかなか出てこない場面も。
それほどに“佐々木”は、監督、演者、観客たち、すべてを魅了する。
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