第79回カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品作『ナギダイアリー』が9月25日公開。名古屋・伏見ミリオン座での初日舞台挨拶に深田晃司監督が登壇し、岡山県奈義町との出会い、登場人物への向き合い方、名古屋の思い出まで語り尽くした。
映画『ナギダイアリー』深田晃司監督舞台挨拶レポート
2026年9月25日(金)、名古屋・伏見ミリオン座にて映画『ナギダイアリー』の公開初日舞台挨拶が開催された。監督・脚本を手がけた深田晃司監督が登壇。平田オリザの演劇「東京ノート」に着想を得た深田監督オリジナル脚本の作品。第79回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に正式出品されたことでも話題の最新作を携えて、名古屋の観客に向けて思いを語った。

「岡山県奈義町を訪れ、ここで映画をつくらないのはもったいない」
舞台となった架空の町「ナギ」について問われた深田監督は、岡山県奈義町との出会いについて、「2016年の8月に初めて奈義町を訪れました。きっかけは平田オリザさんにとてもいい美術館があると誘われて」と当時を振り返った。そこで目にした、建築家・磯崎新設計の「奈義町現代美術館」に心奪われたそう。「素晴らしい美術館で、そこでしか見られない空間インスタレーションで固有性がある。しかも美術館の建築設計自体が地元のシンボルの山・那岐山を一望できるようになっていて、そこで映画を作らないのはもったいないと思うようになりました」と話し、もともと平田オリザの演劇「東京ノート」と同じく東京の美術館を舞台にした映画をつくる予定を奈義町に移し替え一からオリジナルの脚本を執筆。奈義町に10年にわたって通い、また10ヶ月実際に滞在し取材を重ねてきたという。
観客の質問に答えるQ&A
「キャラクターの心理は半分くらいしか考えていない」
Q.登場人物の心理やセクシャリティについて敢えて説明されず、観客が意味を補いながら見る作品だと思う。かつてインタビューで登場人物は「理解しえない他者である」と話されていますが、脚本の時点で登場人物に対して明確な答えを持っているのか?分からないまま撮影されるのでしょうか?
A.だいぶ深堀りしていただいてありがとうございます(笑)。仰っていた通り映画をつくる時「基本、人の心は分からない」と思っています。夫婦だって心の中はブラックボックスですよね。それをあたかも分かるかのように表現してしまうのはあまり好きではない。履歴書を作るのも好きではなくて、小説でもキャラクター設定どおりのことしか言わないキャラは奥行きが無くて苦手です。自分はよく作品と自分の関係を「親と子」に例えますが、親子は一番身近な他人でしかない。”へーうちの子そんなことしているんだ!”という距離感なんです。登場人物の言動の心理的裏付けは半分くらいしか考えていないと思う。半分は思い付きに任せるという匙加減にしています。「この先彼らはどうなるんですか?」とよく聞かれますが「未来のことはわかりません」と答えますね。


「たい焼きを頭から食べるか、尻尾から食べるか」
Q.春樹と圭太ががたい焼きを食べているシーンで、それぞれ頭からと尻尾から食べているのが印象的でした。あのシーンは思い付きなのか、練られた演出なのかどちらでしょうか?」
A.よくご覧になっていますね(笑)!あのシーン自体が脚本にはなくて、奈義町で唯一の人気のたい焼き屋さんがあって、たい焼きを食べるシーンを思い付きました。「普通頭から食べるだろ?」というセリフもあったんですけど編集でカットしちゃいました。夫婦でも結婚してみたらこの人こんな人だったの?ということがありますよね?あの二人も将来こういうことがたくさん起きるんだろうなということを想像しながらつくったシーンです。


「あんかけスパの量に驚愕! 名古屋は宇宙の法則が乱れている」
舞台挨拶の終盤、Q&Aの合間に深田監督が突然あんかけスパゲティの話をはじめ会場が笑いを包まれた。「名古屋名物が食べたいと言ったらあんかけスパゲッティを食べ連れて行ってくださったんですが、1.5倍を頼んだらめちゃくちゃ量が多くて!」と苦笑い。「店の解説を見たら、普通が220ℊで1.5倍が440ℊでおかしいじゃん!と。名古屋だと宇宙の法則が乱れるんでしょうか?」名古屋メシとの格闘を楽しそうに語った。
奈義町の自然に苦労もよろこびも
偶然にも奈義町出身のお客さんが質問者に。前述のたい焼き屋さんはこの方の同級生が営んでいるということで「頭から食べても尻尾から食べてもぎゅうぎゅうにあんこが詰まっています!」と聖地巡礼を促した。
Q.冬は寒く、風の強い奈義町での撮影で大変だったことや良かったこと、牛の演技指導はどのようにしたのでしょうか?
A.キャストの皆さんもインタビューで答えていると思いますが、撮影は3月でものすごく寒かったです。山間の街だからか天候も変わりやすい。寒さでいうと奈義町現代美術館の前のワークショップのシーンはカメラには映っていませんが雪が降っていたんですが、エキストラの皆さんは半袖でしっかり演じてくださいました。
奈義町は自然が豊かで田んぼも林も森もあるところなのに、ある時”緑を大切に”という看板を見つけて、東京の人間からしたらこれ以上どう大切にするんだ?とびっくりしましたね(笑)。
牛の演技に関しては地元の牧場の方に協力いただいて、見事に誘導してくださって、いい芝居をしていましたよね!現場でガッツポーズしましたよ!


「映画は余韻が一番大事。ぜひ味わってほしい」
最後のメッセージで深田監督は、「『ナギダイアリー』誕生の日に立ち会っていただきありがとうございます」と感謝を伝え、さらに「映画は余韻が一番大事だと思っているのですが、自分がべらべら喋ってしまって壊してしまったかもしれません…是非お家に帰って時々思い出していただけると嬉しいです。」カンヌを経て、名古屋の地でも熱く語り続けた深田晃司監督。映画の余韻に浸りつつ終始和やかな舞台挨拶となった。

映画『ナギダイアリー』を解説!
映画『ナギダイアリー』とは?
第79回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に正式出品された、深田晃司監督による最新作。岡山県奈義町をモデルにした架空の町「ナギ」を舞台に、彫刻家の寄子(松たか子)と、建築家で弟の元妻・友梨(石橋静河)が過ごす数日間を丁寧に描いたヒューマンドラマだ。
『淵に立つ』『LOVE LIFE』とカンヌ・ヴェネチアで世界的評価を受けてきた深田監督が、10年以上にわたって奈義町に通い続け、生まれた一作。説明されない余白と、人と人の繊細な距離感が、静かな余韻となって観客の心に残る。
映画『ナギダイアリー』ストーリーは?
自然豊かな町「ナギ」で、山の木材を使った彫刻制作に打ち込む寄子(松たか子)。ある日、東京と台湾で建築家として活躍する友梨(石橋静河)が、数日間の休暇をかねて寄子のもとを訪れる。義理の”元姉妹”である二人が共に過ごす夜、友梨は毎晩のように彫刻のモデルを務めながら、想い人を亡くした寄子の癒えない喪失感に少しずつ触れていく。
寄子の幼なじみで役場勤務の好浩(松山ケンイチ)、その息子・春樹(川口和空)ら周囲の人々との出会いも重なり、穏やかな日常の中に小さな揺らぎと変化が生まれていく——。人と人のあいだにある、言葉にならない感情を描いた9日間のスケッチ。
作品概要

タイトル:映画『ナギダイアリー』 (9月25日(金)より新宿ピカデリー、ユーロスペース ほか全国ロードショー)
監督・脚本:深田晃司
出演:松たか子、石橋静河、松山ケンイチ、川口和空、藤原聖、藤間爽子、水間ロン、申瑞季
配給:スターサンズ
公式サイト:https://starsands.com/nagidiary
© 2026 ナギダイアリー・パートナーズ (スターサンズ/八朔ラボ/ワンダーストラック) / Survivance / Momo Film Co.


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