映画『すずめの戸締まり』「行ってきます日本」全国舞台挨拶@名古屋 取材してきました!

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©2022「すずめの戸締まり」製作委員会

現在公開中の映画『すずめの戸締まり』。

『君の名は。』『天気の子』を手掛けた新海誠監督が自身の集大成という最新作だ。

名古屋で行われた映画『すずめの戸締まり』「行ってきます日本」全国舞台挨拶には、新海監督と主人公・すずめの声を担当した原菜乃華さんが登壇し、映画制作の裏話などを語った。

映画『すずめの戸締まり』とは?

『すずめの戸締まり』をちょっと解説

『君の名は。』『天気の子』新海誠監督、待望の最新作。 集大成にして最高傑作『すずめの戸締まり』とは?

日本各地の廃墟を舞台に、災いの元となる”扉”を閉めていく少女・すずめの解放と成長を描く現代の冒険物語。

すずめの声を演じるのは、1700人を超えるオーディションで選ばれた原菜乃華。
みずみずしく、意志のある声に惹きつけられる。

扉を閉める旅を続ける“閉じ師”の青年・草太役には、SixTONESの松村北斗。
椅子に姿を変えられてしまう青年という難役を、時には躍動的に時には悲しみを称え、演じ切っている。

そして二人を支える、すずめの叔母・環役に深津絵里、草太の祖父・羊朗役に松本白鸚。
さらには染谷将太、伊藤沙莉、花瀬琴音、花澤香菜、神木隆之介という精鋭キャストが集結しすずめの旅を彩り豊かにしている。

音楽には、新海作品3度目のタッグとなるRADWIMPS。

また、主題歌「すずめ」を唄うのは次世代の逸材・十明。
唯一無二の歌声で、物語の世界観をぐっと私たちの心に刻み込む。

『すずめの戸締まり』ストーリー

九州の静かな町で暮らす17歳の少女・鈴芽(すずめ)は、「扉を探してるんだ」という旅の青年・草太に出会う。
彼の後を追って迷い込んだ山中の廃墟で見つけたのは、ぽつんとたたずむ古ぼけた扉。
なにかに引き寄せられるように、すずめは扉に手を伸ばすが…。

扉の向こう側からは災いが訪れてしまうため、草太は扉を閉めて鍵をかける“閉じ師”として旅を続けているという。
すると、二人の前に突如、謎の猫・ダイジンが現れる。

「すずめ すき」「おまえは じゃま」

ダイジンがしゃべり出した次の瞬間、草太はなんと、椅子に姿を変えられてしまう―!
それはすずめが幼い頃に使っていた、脚が1本欠けた小さな椅子。
逃げるダイジンを捕まえようと3本脚の椅子の姿で走り出した草太を、すずめは慌てて追いかける。

やがて、日本各地で次々に開き始める扉。
不思議な扉と小さな猫に導かれ、九州、四国、関西、そして東京と、
日本列島を巻き込んでいくすずめの”戸締まりの旅”。
旅先での出会いに助けられながら辿りついたその場所で、すずめを待っていたのは、忘れられてしまったある真実だった。

公式HPより

新海誠監督、原菜乃華さん登壇!舞台挨拶を超詳細レポート!

名古屋に来たのは〇〇ぶり?!

―― 名古屋の皆さんにご挨拶を。

新海監督「2時間の長い映画を観てくださり、本当にありがとうございます。お疲れだと思いますが、30分ほど楽しいお話ができればと思います。一緒に楽しみましょう。」

原さん「本日はお越しいただきありがとうございます。こんなにもたくさんの方に観ていただけて、すごく嬉しいです。短い時間ですが、本日はよろしくお願いします。」

―― 名古屋にいらっしゃったのは久しぶりですか?

新海監督「6年前に『君の名は』。で、3年前に『天気の子』で来たので、3年ごとに来ているという感じです。この3年間、コロナとかすごく大変なことがあったと思うんですけど、皆さんの顔を見られたことがとても幸せです。皆さん、元気でしたか?」

客席から拍手👏

原さん「名古屋は6、7年ぶりですね。」

新海監督「まだ子ども時代ですか?」

原さん「子どもです(笑)。名古屋メシ、名古屋コーチンを昨日食べさせてもらって、今日のお昼も味噌煮込みうどんをいただいて最高に美味しかったです。」

新海監督「名古屋食べ物が美味しいですよね。うらやましい…。」

原さん「食べましたよね?一緒に。」

新海監督「食べました!(名古屋の)皆さんが羨ましい(笑)」

松村北斗「できない!」の叫びに新海監督は?

―― 『すずめの戸締まり』を初めて観てた方も、3回以上観ている方もいらっしゃいます。

新海監督「特に今日初めてご覧になった方は、たくさんの情報をぎゅっと詰め込んだ映画なので、“何を観たんだろう”とか“何を感じればいいんだろう”と、もしかしたら整理できないまま、今話を聴いている方もいるかもしれませんが、色々な質問の中で、一緒にお話をしながら、映画好きか、そうではなかったか(笑)…。感想を定めていっていただければ嬉しいです。」

―― すずめ役のオーディションについて

新海監督「1700人の中から菜乃華さんを選ばせてもらったとよく記事にも書かれていますが、大げさに言っているんじゃないの?と思われるかもしれませんが本当にやっています。松村北斗くんの草太役に関してもそうなんですが、特にすずめ役はオーディションの人数がとても多かったです。声優さん、女優さん、アーティストやアイドルも含めて、すずめの年代に近い方々から広く募って、1700人の方が候補になりました。もし、僕が他の作品のプロデューサーで、作品にぴったりの人を1人選べと言われたら訳が分からないと思うんですよね。1700人の声を聴いても差が聞き取れない。でも、自分の映画だと、脚本もすべて自分で書いていて、自分の子どものようなものなので。皆さんの目の前に1000人の子どもがいても、自分の子どもがパッとわかるように、僕も何人居たとしてもわかるんです。“この人なんじゃないかな、すずめは”と。1700人の声を全て聴いて、何人か候補を残して、あとは丁寧に直接お会いしながらお芝居を聴いていくんですけど、でも、最初に思った“菜乃華さんかな”という直感のようなものを確認していくような作業でした。僕にとって一番怖いのは。オーディションに菜乃華さんが居なかったときですよね。1700人いくら探しても、自分の子ども居なかったら、途方に暮れてしまったと思うんですけれども、今回は幸いなことに菜乃華さんと北斗くんが居ましたので、アフレコについては特に不安もなく、二人に託せば大丈夫だと思っていました。」

原さん「新海監督は毎回そう仰ってくれて、そのたびにすごく安心するんですけど、アフレコに入る前は嬉しさよりも不安や重圧の方が大きくて。でもそのたびに監督が「僕たちは何も心配していません」とはっきりと仰ってくれたのを思い出しながらアフレコを頑張っていました。」

新海監督「不安そうにしているのは菜乃華さんも北斗くんも同様にわかったんですけど。北斗くんはアフレコに初めて立った時に叫んでましたよね(笑)」

原さん「「できないー!」って叫んでらっしゃって、逆に松村さんでも緊張するんだから私なんかが緊張するのは当たり前のことなんだなと思えて、松村さんなりの優しさだったんだろうなと思ってすごく有難かったです。隣で一緒に闘ってくれているような感覚がありました。」

新海監督「いや、僕は「できない!」って叫んでるから大丈夫かなと思いましたよ(笑)。でも二人が不安そうに取り組んでくれているのが嬉しいと思ったんですよね。その不安も含めて映画に貰えると思っていました。映画って何でもそうですけど、物語がスタートした時点だと主人公は何らかの欠落や不安を抱えているんでるよね。それがエンディングを迎えた時には、一歩背筋が伸びるような状態で“行ってきます”と言えるようになるのが一本の映画だったりするので、同じ工程を役者たちが辿ってくれて、2か月かけて、ひたすら声を入れて、すずめの成長とシンクロするようなお芝居を二人にはしていただけたと思います。」

会場歓喜!新海監督書下ろし台本で生アフレコ!

新海監督「せっかくの機会なので、実際にアフレコをしてもらおうと思います。よろしいですか?」

客席から大拍手👏👏👏

新海監督「新幹線の中で台本を書いてきたので。」

原さん「アフレコの時の定位置に移動していいですか?松村さんがこの辺りにいらっしゃって、目の前に画面があって画が流れていて、ガラスを一枚隔てた向こう側に監督がいらっしゃって、マイクで演出をしてくださいます。」

新海監督「僕たちは役者の横顔をみながら、或いはずっと台本をみながら声だけを聴いているんですけど、皆さんは芝居をする役者の顔を正面から見られるので、うらやましいです。」

原さん「向こう側の声は聞こえないので、すごいけちょんけちょんに言われているじゃないかと(笑)」

新海監督「そんなことはない(笑)。大体話していることは、僕一人で決めるわけじゃないので、音響監督たちに「3回やってもらって僕はひとつ目がいいと思うんだけど、どのテイクがいいと思いますか?」とか「このシーンがこのテイクだったら、次の声はもう少しこのトーンになったらいいかな」とか、相談しているんですよ。では、戸締りのシーンのアフレコです。今日は草太がおりませんので、特別にすずめに草太の決めセリフもらいます。」

原さん「頑張ります!」

新海監督「すずめは扉を締めながらなので、力を込めて唱えましょう。北斗くんが来られなくて非常に悔しがっていました。「仕事があってどうしても行けないんですけど、皆さんによろしくお伝えください」って結構頻繁にLINEが来るんですよ。だったら来れば?と思うんですけど(笑)。なので僭越ながら僕が草太役をやらせていただきます。」

客席から拍手👏

新海監督「いつも僕からキューを出すんですけど、菜乃華さんにキューを出してもらったら、扉を締めている草太の息から入ります。」

原さん「わかりました!では僭越ながらスタートさせていただきます。よーい、スタート!」

~ 生アフレコ ~

客席から大拍手👏👏👏

新海監督「こういう風にやり取りしながら、細かいニュアンスを何度も何度もやりとりしましたね。」

原さん「何回もやりました(笑)」

新海監督「10回20回30回と、時にはやって。2か月間かけてね。」

原さん「一番最初に見本で、監督がすずめ役も草太役も入れたビデオコンテをいただくんですけど、まぁ監督がお上手なので、これを超えなきゃいけないというハードルがとても高くて。すずめ役でも監督は違和感がないんじゃないかというくらい。」

新海監督「そんなわけないです(笑)!ちょっと声のトーンを上げて喋っているだけで!ビデオコンテは2時間の映画ですから2時間分、ラフな画に声を入れて、効果音も借りてiPhoneで録音したものを入れて作るんですけど、声は役者たちに、画はアニメーターたち、背景美術の人たち、CGの人たちで、ひとコマひとコマ、一枚一枚上書きしていくんですよね。それを1年8か月くらい続けたのかな…それで完成するんです。僕にとっては、そのビデオコンテが全部完成カットになって、役者さんの声になったときは、本当に空気が入れ替わったような、色が塗り替わったような新しい作品になったような感動があって、いつもそれが楽しみでやっているようなところもあります。でも、今日は聴いていただけて嬉しかったです!」

ティーチインで次回作についても…

【お客様からの質問に答えるティーチイン】

―― 新海監督の『星を追う子ども』が大好きです。『星を追う子ども』のアガルタ、今回の『すずめの戸締り』の常世はとても似ているように思いました。この二つの関連は意識されたのでしょうか?

新海監督「『星を追う子ども』は2011年、震災の年の作品です。気に入ってくださった方もいらっしゃいますが、僕は今振り返っても苦しい気持ちになります。“新海さんに期待していた映画ではない”と言われることもとても多いです。僕がもしプロデューサーだったら、新海という30代の作家にもっとうまくやらせることができたような気がするんですね。あの時はひとりで必死にやっていて、闇雲に全力でやっていたんですけど、でもやっぱり、お客さんに伝えるための技術や考え方が足りない部分もあって…自分でも好きな作品なんですけど、うまく届けきることができなかった後悔のようなものがあります。ですので『星を追う子ども』に限らないんですけど、“今度こそ”という気持ちはありました。いろんな連続感の中で作っているのは確かですので、そこに気づいていただけたのはとても嬉しいです。ありがとうございます。」

―― 劇中では名古屋は飛ばされてしまいしたが(笑)。

新海監督「名古屋はスキップしてしまいました(笑)。日本各地に行くということは決まっていましたので、その間のルートは映画の尺のなかで描き切れる、展開的に観客を飽きさせないルートを最優先で選びました。色んな案があって、神話をモチーフにしている部分もあるので、ヤマトタケルノミコトとの東征のルートを当てたらどうかとか、或いは“戸”という文字のつく地名を辿っていったらどうかとか。方言もだんだん変化してく行程を描けたので僕にとっては楽しいルートでした。

―― 次の作品にもう取り掛かっているのでしょうか?

新海監督「僕としては、ついこの前できあがった作品という感じで、ぜえぜえ息を切らしながら終わったと思ったら、東宝にプロモーションをギュと詰め込まれてしまって、休む間もない状態なので、まだ白紙なんですね。この映画を公開してから、「怖くて怖くてしょうがない」と泣き言を菜乃華さんにも言ってしまっているんですけど、そのたびに「大丈夫ですよ」と励ましてくれています。怖い理由は、どういう風に観客に受け止めてもらえるんだろう…という怖さです。8年くらい自分がずっと考えてきたことを描けて、最高のスタッフを集めて、これ以上ないという映画を出したつもりなので、これで無理だったら次どうしていいかわかならいなと思って怖いんですね。次回作ですごく怖いのは、僕は今49歳なので、この人生でまだもう少し映画を作り続けられると思うんですけど、『すずめの戸締まり』よりいいと自分で思える作品が作れるか、まったく自信がないんですね。空白になってしまって…どうしたらいいですかね(笑)? ただ、キャンペーンで菜乃華さんたちと色んな場所を周りながら、皆さんの顔をみたりしながら、もしかしたらちょっとずつ何か出てくるかなという期待もあるので。今日も次を作れと言われた気がしますので、背中を押されたつもりで何とか頑張ろうと思います。ありがとうございます。」

最後にメッセージ

新海監督「『すずめの戸締まり』という映画は、僕の力ではまったくできなかった映画だったと思います。エンディングのRADWIMPSの「カナタハルカ」で、“僕にはない、僕にはないものでできてる、君がこの僕を形作ってる”という歌詞がありますが、そういう映画を作ったようなつもりでいます。素晴らしいキャスト、スタッフの力もそうなんですけど、観客の皆さんと一緒に作ったような気分がどこか濃い作品なんです。『君の名は。』を観て、また他の作品を観て、“私は次こういう映画を観たい”とか、“映画でああいう風に言っていたけど、私はこう思う“とか”新海さん、あなたが行く場所はそっちじゃなくて、こっちでしょ“というような皆さんの声がずっと聴こえてきたような気がして、この映画まで導かれました。ですので、少しでもこの映画を気に入っていただけたら、”私が一緒に作った、参加したんだよ“という気持ちで映画に寄り添っていただけると、とても幸せです。」

新海監督「『すずめの戸締まり』は、これから日本全国、或いは世界に旅立っていく映画です。それでは、「すずめさん!」。」

原さん「はい!「行ってきます!」。ありがとうございました!」

映画『すずめの戸締まり』概要

タイトル:『すずめの戸締まり』

監督・脚本・原作:新海誠

声の出演:原菜乃華、松村北斗、深津絵里、染谷将太、伊藤沙莉、花瀬琴音、松本白鸚、神木隆之介、花澤香菜 他

音楽:RADWIMP、陣内一真

配給:東宝

©2022「すずめの戸締まり」製作委員会

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