2月10日(土)映画『Firebird ファイアバード』の舞台挨拶が名古屋のミッドランドスクエアシネマで行われた。
本作は、ロシアの無名の俳優セルゲイ・フェティソフが綴った回顧録「ロマンについての物語」を元に映画化した作品だ。ソ連統治下のエストニアを舞台に、空軍基地に配属された若き二等兵とパイロット将校の、許されない秘めた愛が描かれる。
舞台挨拶には、日本公開を記念して緊急来日した、ペーテル・レバネ監督、レバネ監督と共同脚本も務めた主演のトム・プライアーさん、ウクライナ出身で英語を2ヶ月でマスターし撮影に臨んだというオレグ・ザゴロドニーさんが登壇し、会場は大いに盛り上がった。
今回は、舞台挨拶前に行われたインタビューの模様をリポートします🎤
映画『Firebird ファイアバード』監督・俳優インタビュー🎤
はじめに、トムさんとオレグさんに役作りのために取り組んだこと、挑戦したことを聞くと、オレグさんは、「まず英語を学んだ。」さらに、軍の規律を学ぶために基地に行き、射撃や森の中でどうやって寝るのかなどを学んだそうで、「とても興味深い経験をさせてもらった。」と話した。レバネ監督と共同脚本を手掛けた主演のトムさんは、「ライターとして、役者として、たくさんのリサーチをした。」といい、「衣装などもしっかりリサーチすることで、どのように振舞えばいいのか分かるようになった。」また、「エストニアやNATOの国防軍に彼(オレグさん)と一緒に行き、トレーニングを受けたことで、忠実に真実のままに描きたいとより思うようになった。」と当時を振り返った。また、レバネ監督は、俳優2人の魅力について、「素敵な俳優は、予想していなかったことが起こってもそれを受け入れて対応できる。2人はそれが出来る俳優だ。」と称賛した。
この映画『Firebird』やレバネ監督のロビー活動がエストニアの同性婚承認の原動力になった言われている。まだ日本では法的に認められておらず、苦しんでいる人がいることについて、レバネ監督は、「日本は先進的で、思いやりの文化がある国なのに、平等の権利が認められていないことは悲しいこと。将来の可能性を人々に与えるべきだ。」と語り、承認に向けての対策として、「皆さんがきちんと意見をいうことが大切。エストニアで合法化されたのは、ゲイの人たちだけではなく、ストレートの人たちの力が大きかった。恐れず、自分の心に従い、政府や友人にも意見を言うことで、日本でも平等の権利が与えられるのでは。」とメッセージを送った。
この作品で一番伝えたいことは?という質問に、レバネ監督は、「1970年代のソ連統治下の人々の人生はどんなものだったのか、ディテールを忠実に描きたかった。映画は違う人生を経験できるもの。その中で共感することで、差別に対する恐怖が小さくなればと思う。」またトムさんは、「自分にとってこれが真実だと思うことを追い求めてもらいたい。この映画の主人公セルゲイは、自分にとっての愛を追い求めた。」劇中最後にセルゲイが浮かべた”ある表情”について、「自分の信念や希望を貫き、すべてが然るべき方向に向かっていると悟った表情だ。」と語った。オレグさんが伝えたいことは、「人々が自分自身であるということが一番重要。映画の登場人物は悲しいことにそういうチャンスがなかった。自分がやりたいことをやることで、幸せを感じ、人に対してもケアができる。」と、それぞれの作品に込めた思いを話してくれた。
最後に共同で脚本を執筆したレバネ監督とトムさんに、それぞれの役割分担を聞いた。レバネ監督は、ベルリン国際映画祭でこの物語を知り、脚本を書き始めたという。その後、トムさんを紹介され2年間共に執筆してきたそう。役割分担についてトムさんは「お互い別々の強みがある。」と話し、自分の強みは「感情の部分でディテールを追求すること。」レバネ監督の強みは「構造的な部分で強みを発揮する。」といい、「お互いの強みがうまく組み合わさった。」と語った。さらにロシアで主人公のセルゲイさん本人に会ったことにも触れ、「実際にお会いしたことで、彼の人生を反映させるべく脚本を書き換えた。当時の困難な時代にあっても、彼は希望と喜びある人生だった。」と最後の最後まで脚本を書き換えて撮影に臨んだと、この作品への思いを熱く語ってくれた。
映画『Firebird ファイアバード』ストーリー
1970年代後期、ソ連占領下のエストニア。モスクワで役者になることを夢見る若き二等兵セルゲイ(トム・プライヤー)は、間もなく兵役を終える日を迎えようとしていた。そんなある日、パイロット将校のロマン(オレグ・ザゴロドニー)が、セルゲイと同じ基地に配属されてくる。セルゲイは、ロマンの毅然としていて謎めいた雰囲気に一瞬で心奪われる。ロマンも、セルゲイと目が合ったその瞬間から、体に閃光が走るのを感じていた。写真という共通の趣味を持つ二人の友情が、愛へと変わるのに多くの時間を必要としなかった。しかし当時のソビエトでは同性愛はタブーで、発覚すれば厳罰に処された。一方、同僚の女性将校ルイーザ(ダイアナ・ポザルスカヤ)もまた、ロマンに思いを寄せていた。そんな折、セルゲイとロマンの関係を怪しむクズネツォフ大佐は、二人の身辺調査を始めるのだった。
公式HPより
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