シネマクエスト 神取恭子のシネマコラム vol.176 映画『街の上で』 今泉力哉監督 名古屋舞台挨拶レポート
下北沢という街に生息する人々
昨年5月公開予定だった映画『街の上で』。4月9日、待ちに待った一年越しの全国公開となった。
『愛がなんだ』 『アイネクライネナハトムジーク』 『his』の今泉力哉監督。今回はオリジナル共同脚本で、漫画家の大橋裕之さんとタッグを組んでいるのも興味深い。
先に公開になった今泉監督の『あの頃。』についてはvol.171で紹介したが、ヲタクたちを全肯定した共感度98%の作品だった。
では、今回紹介する『街の上で』はどうか。
恋愛映画の旗手、惚れっぽい体質(本人談)の今泉監督の真骨頂。何気ない日常を生きる男女のやりとりが、どうしてこんなに愛しくなるのだろう?
下北沢ではじまり、下北沢でおわる物語。下北沢に行ったことがないので知らないけど、下北沢に居そうな人たちが、下北沢っぽい場所で下北沢っぽい会話をしている。言ってしまえばそれだけなのに、最初から最後までニヤニヤしている自分がいた。
今泉作品に共通するのは、ラストの満たされ感。もちろん作品によって響きどころは違うが、毎度「あぁ心の奥があったかい」と思わせてくれる。今作もじんわりと温もりを感じて幸せだった。
主演の若葉竜也さんは『愛がなんだ』のナカハラ役(そういえばナカハラも名前は青)が絶妙で、そこに居そうな人を演じるのが本当にうまい。
そして、友情出演の成田凌さんの贅沢使い。監督と成田さんは飲み友達だと『愛がなんだ』の撮影現場取材の時(vol.89)に教えてくれたが、その関係性あっての役どころではないかと思う。
今回は公開翌日に行われた名古屋舞台挨拶の様子を動画でご紹介。
今泉監督のお話が興味深くて、ネタバレの部分をカットする以外ほとんど編集なしでお届けします。
シネマクエスト 神取恭子のシネマコラム vol.176 映画『街の上で』 今泉力哉監督 名古屋舞台挨拶レポート
〈ストーリー〉
下北沢の古着屋で働いている荒川青(あお)。青は基本的にひとりで行動している。たまにライブを見たり、行きつけの古本屋や飲み屋に行ったり。口数が多くもなく、少なくもなく。ただ生活圏は異常に狭いし、行動範囲も下北沢を出ない。事足りてしまうから。そんな青の日常生活に、ふと訪れる「自主映画への出演依頼」という非日常、また、いざ出演することにするまでの流れと、出てみたものの、それで何か変わったのかわからない数日間、またその過程で青が出会う女性たちを描いた物語。