現在公開中の映画『ベイビー・ブローカー』。
是枝裕和監督が名古屋でティーチインを行うということで、取材ではなくお客さんとして参加してきました。
【夏休みにコレを観よう】③ です!まだご覧になっていない方は、このコラムを読んでみると興味が湧くと思いますよ!
この作品は何を問うているのか?ティーチインでクリアになった部分を書いていきます。
是枝監督×ソン・ガンホ!映画『ベイビー・ブローカー』はどんな作品?
映画『ベイビー・ブローカー』は6月24日に全国公開。
監督は、『万引き家族』でカンヌ国際映画祭のパルムドールという最高峰の栄誉を獲得した是枝裕和監督。
主演は、アカデミー賞®作品賞を受賞した『パラサイト 半地下の家族』で世界から注目を集めるようになったソン・ガンホ。
出演は韓国のスターが揃う。『新感染半島 ファイナル・ステージ』(2021)のカン・ドンウォン。是枝監督と映画『空気人形』(2009)でタッグを組んだペ・ドゥナ。韓国トップの歌姫として圧倒的人気を誇り、女優としての新境地に挑むイ・ジウン(歌手名IU)、「梨泰院クラス」で新世代スターの仲間入りを果たしたイ・ジュヨンなど。
本作は、第75回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に出品され、主演のソン・ガンホが最優秀男優賞を受賞。さらにコンペティション部門とは別に、「人間の内面を豊かに描いた作品」に贈られるエキュメニカル審査員賞にも選ばれ、2冠を獲得した。
気になるストーリーは?
古びたクリーニング店を営みながらも借金に追われるサンヒョン(ソン・ガンホ)と、〈赤ちゃんポスト〉がある施設で働く児童養護施設出身のドンス(カン・ドンウォン)。ある土砂降りの雨の晩、彼らは若い女ソヨン(イ・ジウン)が〈赤ちゃんポスト〉に預けた赤ん坊をこっそりと連れ去る。彼らの裏稼業は、ベイビー・ブローカーだ。しかし、翌日思い直して戻ってきたソヨンが、赤ん坊が居ないことに気づき警察に通報しようとしたため、2 人は仕方なく白状する。「赤ちゃんを大切に育ててくれる家族を見つけようとした」という言い訳にあきれるソヨンだが、成り行きから彼らと共に養父母探しの旅に出ることに。一方、彼らを検挙するためずっと尾行していた刑事スジ(ぺ・ドゥナ)と後輩のイ刑事(イ・ジュヨン)は、是が非でも現行犯で逮捕しようと、静かに後を追っていくが…。〈赤ちゃんポスト〉で出会った彼らの、特別な旅が始まる―。(公式資料より)
是枝監督の名古屋ティーチインはどんな様子だった?
7月17日(日)是枝監督が名古屋を訪れ、計3回お客さんの質問に直接答えるティーチインに登壇した。
私は伏見ミリオン座で行われた13時15分~上映の回に参加しました。チケットは完売!残り席わずかの時に購入したので、前から二列目のスクリーンを見上げる席でしたが、映像も字幕もちゃんと観られました。
今回は取材ではないので、もちろん録音はしていませんし、メモも取っていません。(監督のご意向で”映画を観てくださる皆さんとのコミュニケーションに集中したい”とのことで、取材は入っていません)
なので、これは私の記憶によるレポートで、ニュアンスで表現する部分もありますがご了承ください。
Q.ペ・ドゥナ演じる刑事が冒頭で言った「捨てれるなら産まなければいい」というセリフと、後半で出てくる母親・ソヨンの問いについて。
是枝監督:この作品は、ペ・ドゥナ演じる刑事スジの気持ちがどのように変化するかを2時間描いている。
赤ちゃんを捨てること、赤ちゃんを連れ去り売るということ。この許しがたい行為に対して、何としても現行犯逮捕すると意気込む刑事スジ。彼らを追ううちに、そして母親ソヨンから問われた言葉に、スジの心に迷いが生じる。スジはどのような答えを見出すのか?観客の私たちも同じように正解を求めてグルグルと考えさせられる2時間だ。果たしてそれは正解かはわかないが…。
Q.撮影で韓国に滞在し、韓国社会の変化についてどう思ったか?
是枝監督:韓国の映画界は完全にデジタル化していて、フィルムで撮影することはできない。スタッフもかなり若年化している。アメリカの文化が入って良かった部分と失われていくものがある。車のシーンは韓国では実際に走らせることはほとんどなく、車窓はフルCG。効率を大事にしているから。映画『パラサイト』でソン・ガンホが運転するシーンもCGだった。今回は実際に車を走らせて撮影した。ペ・ドゥナも車の窓から入ってくる風は本物でないと、と言っていた。
Q.個人的に結末が腑に落ちなかった。(←映画に文句があるわけではないんです!と仰って、会場も笑いに包まれていました)
是枝監督:赤ちゃん・ウソンをどうしたらよいのか(どうしたら幸せにできるか)を皆が考える話にしたかった。
このお客様の感想は、すごくわかります。納得いかないという意味ではなくて、”どうやったらウソンを幸せにできるか”の答えは簡単ではないということなんです。10人居れば10通りの思いが生まれる作品だと思う。だって、それぞれ育った環境も、幸せの定義も違うから。映画の登場人物たちがたどり着いた結末は、ただの一つの答えにすぎません。2時間、映画を観る過程で自分に様々な問いかけをすることは、とても大切で豊かなことだと思います。
Q.是枝監督の作品には音楽を感じます。脚本を書くときなどに何か音楽を聴いていますか?また、プライベートではどんな曲を聴きますか?
是枝監督:脚本を書くときは、今回の作品はピアノだな、ギターだなとイメージします。今回は音楽のジェイルさんがどうしても参加したいと言ってくれた。『ベイビー・ブローカー』はギターのイメージだと伝えたら”自分はギターもやっている!”とすぐに音源を送ってくれた。プライベートでは宇多田ヒカルさんを聴いている。声が好き。ソヨンを演じたIUさんも同じだが、息を吸い込むところと語尾が特に好き。
【作品概要】
■監督・脚本・編集:是枝裕和
■出演:ソン・ガンホ カン・ドンウォン ペ・ドゥナ イ・ジウン イ・ジュヨン
■配給:ギャガ
■公式HP https://gaga.ne.jp/babybroker/
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