”鬼平”こと長谷川平蔵の過去と現在が交錯する劇場版『鬼平犯科帳 血闘』。
松本幸四郎さん、市川染五郎さんが親子で”鬼平”を演じることでも話題だ。かつて”鬼平”を演じた、祖父の初代松本白鷗さん、そして叔父の二代目中村吉右衛門さん。受け継がれた”鬼平”への思いを胸に新たな「鬼平犯科帳」を作り上げたお二人が名古屋の舞台挨拶で語ったこととは?
松本幸四郎・市川染五郎が名古屋で舞台挨拶🎤
5月12日(日)、公開3日目に行われた名古屋舞台挨拶の様子をレポート🎤
黒のオーバーサイズのジャケットに黒のシャツ、黒のネクタイでモードな印象の市川染五郎さん、紺のダブルのスーツに紺のシャツ、紺のネクタイ、紺のチーフでさすがの貫禄の松本幸四郎さん。
染五郎さん、幸四郎さんの順に登壇し、まずは幸四郎さんから名古屋のお客様にご挨拶。「5月10日に初日を開けさせていただき、今日このように名古屋で舞台挨拶ができることを本当にありがたく思っています。」続いて染五郎さんは「やっと職人たちのこだわりの結晶が多くの皆さんに届くことが嬉しい気持ちでいっぱいです。」と感謝と公開の喜びを伝えた。
名古屋での楽しみは、エビフライ、山ちゃん、○○
6年前、松本幸四郎襲名披露で名古屋を訪れた幸四郎さんは、名古屋で楽しみにしていることを聞かれると、「父と襲名披露で御園座のこけら落とし公演にお邪魔して以来ご無沙汰しているんですけれども、名古屋は芸どころということもあり、すごく真剣に見ていただいていると感じられる場所です。あとは、名古屋メシですね。名古屋で食べる味噌は美味しいですし、エビフライ…世界の山ちゃん…和菓子も…キリがないですね(笑)」また染五郎さんは「歌舞伎の公演に毎年色々なところでやっていますけど、名古屋だけまだ伺ったことがなくて、これから知っていけると思います。さっき控室でコンパルのエビフライサンドをいただきまして、もともと知っていたんですけど食べたことはなかったので、食べられたことが嬉しくて(笑)」
染五郎の殺陣の点数は?
和やかな雰囲気になったところで、映画についての話題に。二人一役で”鬼平”を演じて、お互いに印象に残っているシーンについて幸四郎さんは「”血闘”というタイトルだけあって、立ち回りの場面が多い作品で、スクリーンで観ていただける劇場版だからこそ、スケールが大きくダイナミックな映像になっています。染五郎も殺陣も切れ味が良く、殺陣師の先生にずいぶん指導していただいて、その成果が出たのではないかと思います。」染五郎さんの殺陣の点数は?と聞かれ「えー何点?(染五郎さんに聞く)。そうですね、コンパルを食べたということで引いて、97点。」とユーモアたっぷり。染五郎さんも「100点目指して頑張ります。」と答え、会場は笑いに包まれた。
二人一役で”鬼平”を演じて
役作りの苦労を聞かれた染五郎さんは「父と同一人物を演じるということで、どれだけ父の平蔵に似せたらいいのか、逆にどれだけ父を意識せずにやるかということを、脚本を読ませていただいて一番最初に考えました。もちろん主役である父に合わせていくことは大前提としつつも、銕三郎からすると未来の姿になるので、意識しすぎてもおかしいかなと。基本的には銕三郎を演じることに徹して演じさせてもらいました。」続いて幸四郎さんは「平蔵は強い男だと思います。懐も深い。これと決めたことに何があっても立ち止まらず、下がりもせず、前に進んでいく強さがある。”鬼の平蔵”と呼ばれるだけあるなと、言われるような平蔵を目指して演じました。」
松本幸四郎が語る「鬼平犯科帳」の魅力とは?
「鬼平犯科帳」が長く愛されている理由は何だと思うか?と聞かれると幸四郎さんは「いわゆる勧善懲悪のお話ではありますが、ただの善と悪、白と黒、どちらかということではなく、悪人でも善人でも、登場する人物すべての”人間”が描かれているドラマ。人と人との出会いによって生まれることや知ること、学ぶこと、楽しいこと、悲しいこと…。出会わなければ事が進まないというのが、この時代劇の時代だと思います。人との繋がりを感じていただけるのは、いつの時代も同じではないかなと思いますし、今だからこそ必要とされているのではないかと思っています。」
お客様からの質問タイム
Q.幸四郎さんに質問です。叔父様(中村吉右衛門)が演じた”鬼平”を自分が演じることについてどんな思いがありますか?
幸四郎さん「叔父の「鬼平犯科帳」をリアルタイムで見ていた世代で、やはり、かっこいいし、面白いし、感動するドラマでした。いま「鬼平犯科帳」を皆さんに観ていただく場があるのは、叔父の”鬼平”があったからこそだと思いますので、その素敵さを胸にいっぱい想いつつ、叔父の”鬼平”と一緒に新たな鬼平チームでひとつになって完成させたました。」
Q.染五郎さんに質問です。撮影で大変だったこと、楽しかったことを教えてください。
染五郎さん「この血闘は特に殺陣のシーンが見どころのひとつで、クライマックスの殺陣のシーンは、ワンカット撮ってそれを繋げていくのではなくて、最初から最後までカメラを回しっぱなしで一発で撮ったシーンでした。ドラマと一緒に撮影していたのですが、それも含めて本当に最後のクランクアップのシーンで、自分の気持ちも一番高揚していたというか、これで銕三郎を演じ納めなければならないというプレッシャーだったり、殺陣やアクションは興味のあることだったので、楽しみながら大変さを味わいながら挑んだシーンだったので、一番印象に残っています。」
Q.幸四郎さんに質問です。歌舞伎の舞台と映像は全く違うと思いますが、意識して違いをつけたことはありますか?
幸四郎さん「一つの芝居の中の一つの役を演じるというのは、歌舞伎でも映像でもすべて一緒だと思っています。表現方法は違いますが。映像の場合はひとつひとつ細かく撮っていく。何秒間の積み重ねが今日観ていただいた2時間弱の作品になるわけなので、一期一会というか、同じことは2回出来ないという、瞬発力と集中力が映像の方は必要だなと思っています。舞台の方は始まったら最後、幕が閉まるまで止まらないので長距離走というか、持続の持っていき方が違います。舞台は毎日同じようなことをするのが大事なことで、その上で、来ていただいたお客様との呼吸で自然と舞台が変わってくる。映像の方が一瞬の連続なので、ある意味ライブだなと思いますね。この作品は去年の今頃撮影していましたが、今は同じことはできないですね(笑)。だから自分自身も観ることができるのかなと。あの時でなければできない自分がここに居るという感じです。」
最後にメッセージ
幸四郎さん「『鬼平犯科帳』は叔父が長く務めてきた作品でもあり、遡れば、祖父が映像の最初の長谷川平蔵役でした。そういうご縁のある作品を私がやらせていただけて本当に幸せに思っています。ただ、今回の『鬼平犯科帳』は新たな”鬼平”チームで作られました。スタッフ、キャスト、関係者の方々、すべて新しいチームです。歴史ある”鬼平”を敬いながら、今の時代を生きている我々で作った”鬼平”がスタートいたしましたので、ぜひとも多くの方々に観ていただきたいと思っています。ちょうど去年の今頃、京都の撮影所で撮影しましたが、これまで京都での撮影は真夏か真冬だったんですね。京都は暑いか寒いしかないところだと思っていたんですけど、ちょうど5月6月の撮影でしたのでこんなに過ごしやすい時期が京都にあったんだと(笑)。有難いことに撮影時期もよかったですし、世界一の職人の集まる現場で、この『鬼平犯科帳』という傑作を作らせていただきました。一人でも多くの方に観ていただくためにも、皆様のご協力をひとつよろしくお願いいたします!」
劇場版『鬼平犯科帳 血闘』を解説
劇場版『鬼平犯科帳 血闘』とは?
「鬼平犯科帳」は時代小説の大家・池波正太郎の三大シリーズの一作品に数えられ、 “時代劇の金字塔”として長きに渡って愛され続けている。歴代の「鬼平犯科帳」では、初代松本白鸚が“初代”長谷川平蔵役をつとめ、その後、丹波哲郎、萬屋錦之介、そして二代目中村吉右衛門に受け継がれてきた。
そして今回、池波正太郎生誕100年記念作品として、初代松本白鸚を祖父、二代目中村吉右衛門を叔父に持つ、十代目・松本幸四郎を主演(“五代目”長谷川平蔵)を演じ、“新たな鬼平犯科帳”が誕生した。
※テレビスペシャル1作品+劇場映画1作品+連続テレビシリーズ2作品の計4作品をSEASONシーズン1として制作
第一弾となる、テレビスペシャル「鬼平犯科帳 本所・桜屋敷」が時代劇専門チャンネルで2024
年1月8日(月・祝)に放送され、第二弾として、劇場版「鬼平犯科帳 血闘」を製作し、5月10日(金)に公開。
劇場版では、長谷川平蔵を演じる松本幸四郎をはじめ、“若き日の鬼平”長谷川銕三郎を演じる市川染五郎、平蔵の妻・久栄役の仙道敦子、密偵・おまさ役の中村ゆり、同じく密偵・相模の彦十役の火野正平、筆頭与力・本宮泰風(佐嶋忠介役)、同心メンバー・浅利陽介(木村忠吾役)、山田純大(酒井祐助役)、久保田悠来(沢田小平次役)、柄本時生(小野十蔵役)、平蔵が贔屓にする軍鶏鍋屋『五鉄』の亭主・三次郎役の松元ヒロ、三次郎の女房・おたね役の中島多羅らがレギュラーキャストとして出演。
また、本作のメインゲストとして、鬼平に相対する盗賊一味の引き込み女・おりん役の志田未来、一味の頭で“鬼平の宿敵”網切の甚五郎役の北村有起哉、そして長谷川平蔵がなぜ“鬼平”と呼ばれるようになったのか…その鍵を握る人物・おろく役の松本穂香、さらには、鬼平の上司・京極備前守高久役の中井貴一、ひとりばたらきの老盗賊・鷺原の九平役の柄本明など、日本を代表する錚々たる名優たちが脇を固めている。
劇場版『鬼平犯科帳 血闘』ストーリーは?
長谷川平蔵(松本幸四郎)が若かりし頃に世話になった居酒屋の娘・おまさ(中村ゆり)が密偵になりたいと申し出て来る。平蔵はその願いを退けるが、おまさは平蔵が芋酒や『加賀や』の主人と盗賊の二つの顔を持つ鷺原の九平(柄本明)を探していることを知り、独断で探索に乗り出す。九平を探すうちに凶賊・網切の甚五郎(北村有起哉)の企みを知ったおまさは首尾よく網切一味の中へ入り込む。しかし、おまさは絶体絶命の危機に陥る。
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